人気の「LUMIX GF1」を試す

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 パナソニック <6752> が9月18日に発売したデジタル一眼「LUMIX GF1」(DMC-GF1)の人気が、発売早々高まっている。マイクロフォーサーズ規格で小型・軽量の「ファッション・ムービー一眼」GF1は、09年9月の「BCNランキング」で、デジタル一眼のカラーバリエーションやレンズキットを合算したシリーズ別の販売台数ランキングでいきなり6位に登場。カメラ店の店頭で展示機を手に取る人、店員にあれこれ質問する人の姿は、まったく途切れる様子を見せない。他の製品より明らかに若い女性が多いのも特徴的だ。そんなGF1の魅力を、実際に撮影して確かめてみた。
●白ボディは美しい陶器のような仕上がりが魅力
 GF1は、同社が昨年10月に発売した「LUMIX G1」、この4月に発売した「LUMIX GH1」に続くモデル。パナソニックマイクロフォーサーズ規格のデジタル一眼では3機種目の製品だ。先行する2機種が、従来の一眼レフカメラに近いデザインだったのに対して、GF1は、EVF(電子ビューファインダー)を搭載せず、オプションとすることで独自のデザインに仕上げている。マイクロフォーサーズ機でこちらも大人気のオリンパス「PEN E-P1」と、同じカテゴリのカメラだ。
 GF1のボディデザインは、一眼というより高級コンパクトデジタルカメラの「LUMIX LX3」に近い。その点では、G1、GH1が、一眼レフカメラをよりコンパクトカメラに近づけたもの、だったのに対して、GF1はその逆で、コンパクトカメラの使い勝手をそのままに、撮る楽しみをよりいっそう一眼レフカメラに近づけたカメラ、といえるかもしれない。
●内蔵ストロボは独特のギミックで注目の的
 G1、GH1と、GF1のボディデザインを比較すると、EVFの有無だけでなく、グリップの大きさもかなり異なる。GF1は小さめなグリップだが、手にしてみると、指がかりもしっかりしていて、片手でもかなり安定してホールドできる。
 このあたりにも、LX3で培われたノウハウが活かされているようだ。しかし、GF1を手にした感じは、コンパクトカメラというより、むしろレンジファインダーカメラや小型一眼レフカメラに近い印象だ。GF1は、それだけ剛性感があってよく手に馴染むし、存在感を満喫させてくるカメラだ。
 ところで、GF1の内蔵ストロボは、その凝ったギミックでよく話題にのぼる。レンズ鏡胴やフードによるストロボ光のケラレを抑えるために、一般的なポップアップストロボよりも、発光部が高くせり上がる仕掛けになっているからだ。その構造はさながらパンタグラフのよう。発光部を支える3本足の耐久性を懸念する声も聞かれるようだが、試用してみた限りでは、あまり気にならなかった。けっこうしっかりしたつくりになっている。ただし、発光部がかなり飛び出す格好になるので、誤って何かにぶつけたりしないよう、撮影後はすぐにストロボを収納するクセをつけておいたほうが無難だろう。
●メニュー操作はよく考えられていて直感的
 GF1は操作性もいい。パナソニックのコンパクトデジタルカメラを使ったことのあるユーザーなら、ほぼ違和感なく使いこなせるだろう。ボタン類の配置、メニュー構成もよく考えられていて、筆者も、取扱説明書を見るまでもなく、ほとんどの操作が行えた。特に便利なのが、「Q.MENU」(クイックメニュー)ボタンと「後ダイヤル」だ。
 「Q.MENU」ボタンは、G1、GH1ではカメラ上面にあったが、GF1では背面に移動し、使い勝手が格段に良くなった。撮影時、液晶モニタの上下には、ISO感度やホワイトバランスなどさまざまな設定情報が表示されるが、「Q.MENU」ボタンを押すと、それらをダイレクトに選択して設定変更することができる。いちいちメニュー画面からたどって設定しなくてもすみ、スピーディーに操作できる。
 「後ダイヤル」は、フレキシブルな役目を担ったダイヤルで、各種項目の選択に利用するのはもちろんのこと、Pモード(プログラムAE)で撮影するときは絞りとシャッター速度の組み合わせを変更するプログラムシフト、Aモード(絞り優先AE)で撮影するときは絞り値の変更、Sモード(シャッター優先AE)で撮影するときはシャッター速度の変更を「後ダイヤル」で行う。そして、「後ダイヤル」を押し込むと、今度は露出補正の操作に切り替わる。つまり撮影中の露出のコントロールは、「後ダイヤル」だけでできてしまうわけだ。
 面白いのは、絞り値やシャッター速度を変更するときに、液晶モニタに「露出メーター」を表示させることができるようになったことだ。これはG1、GH1などにはない、GF1ならではの機能。「露出メーター」は、絞り値とシャッター速度の組み合わせが連動して動くバー表示で、カメラに詳しくない人でも、ひと目で適正露出となる組み合わせがわかるようになっている。露出アンダーまたはオーバーとなる場合にはバーが赤く表示されるし、絞り値に見合うシャッター速度がない場合(あるいはその逆も)、バーがグレーになって選択できないことが示されるので、どこまでの範囲で絞り値やシャッター速度を変化させられるのか、視覚的に読み取ることができる。
●さまざまなカスタマイズができて使い勝手が良い
 各種設定のカスタマイズ性が高いのもGF1の魅力だ。たとえば、撮影時の液晶モニタの表示は、一般的な表示のほかに、まるでファインダーを覗いたときのように画面の左右と下部をマスクした「ファインダースタイル」も選ぶことができる。「ファインダースタイル」では、画面下部にだけ、絞り値やシャッター速度などの撮影情報を表示させることができる。
 また、モードダイヤルには、C1とC2の2つのカスタムモードが用意されているので、好みの撮影設定をカスタムセット登録しておけば、モードダイヤルを変更するだけで、すばやく設定を切り替えることができる。コンセプトの近いマイクロフォーサーズ機であるオリンパスE-P1」のモードダイヤルには、残念ながらこうしたカスタムモードがない。ダイヤルを回すだけで複数の設定をまとめて一発で変更できるという点では、GF1のほうが扱いやすそうだ。
 GF1の操作で、筆者が唯一とまどったのは、ドライブモードの変更だ。連写やセルフタイマーでの撮影を設定するドライブモードレバーは、モードダイヤルと同軸に装備されている。つまり、ドライブモードの変更は、スイッチの切り替えで行うのだ。ただ、GF1は、ほとんどの設定が液晶モニタを見ながらソフト的に行えるため、ついそのことを忘れて、「Q.MENU」ボタンを押してドライブモードを呼び出そうとするのだが、それができずに「なぜ?」とまどうことがあった。
 また、モードダイヤルを動かすときに、不用意にドライブモードレバーまで一緒に動かしてしまうこともあった。夜景撮影時や三脚固定で撮影するときなどは、液晶モニタを見ながらボタン操作だけで設定変更できるほうが便利なので、ハードで設定変更するドライブモードにやや違和感を覚えた。もちろんこれは、ちょっとした慣れの問題だろう。
●20mm/F1.7パンケーキレンズにも手ブレ補正がほしかった
 今回は、主に人気のパンケーキレンズLUMIX G 20mm/F1.7 ASPH.」とのセットで撮影した。このレンズは、GF1装着時には35mm判で40mm相当の単焦点標準レンズになる。薄さ約25.5mmでありながら、F1.7の明るさを実現しているのが特徴だ。GF1にはこのほかに、広角28mmから望遠90mm(いずれも35mm判相当)までをカバーする標準ズームレンズ「LUMIX G VARIO 14-45mm/F3.5-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.」をセットにした標準ズームキットも用意されている。
 パンケーキレンズと標準ズームレンズのどちらがGF1によく似合うかといえば、それはやはり20mm/F1.7のほうだろう。オシャレ度という点でも、20mm/F1.7のほうが上を行くと思う。14-45mm/F3.5-5.6を装着すると、GF1のコンパクトな魅力が損なわれるような気がする。
 ただし、問題なのは、20mm/F1.7には手ブレ補正機能が搭載されていないということ。オリンパスE-P1」の場合は、ボディ内手ブレ補正を搭載しているので、17mm/F2.8のパンケーキレンズでも、マニュアルフォーカスのオールドレンズでも、ほぼすべてのレンズで手ブレ補正が有効なのだが、GF1はボディ内ではなく、レンズ側で手ブレ補正を行う仕様になっているため、対応するレンズでしか手ブレ補正が使えない。
 20mm/F1.7は、GF1にとてもよく合うパンケーキレンズなのだが、この点だけは残念でならない。大口径でありながら十分に薄い20mm/F1.7だが、レンズ鏡胴部の直径はけっこう太いので、その分、何とか手ブレ補正機能が搭載できなかったのだろうか、と思ってしまう。おそらく、開放F値をこれだけ明るくしたために、直径も太くなってしまったのだろう。
 「E-P1」には、パンケーキレンズと標準ズームレンズの両方がセットになったツインレンズキットが発売されているが、GF1には、どちらか片方のレンズキットしか用意されていない。この点を不満に感じる人も少なくないはずだ。焦点距離がかぶっているとはいえ、パンケーキレンズと標準ズームレンズは性格も見た目も異なるレンズだから、パナソニックには、できれば両方セットのレンズキットもラインアップしてほしいところだ。
●描写良好のパンケーキレンズだがGF1は高感度が苦手かも!?
 さて、その20mm/F1.7の描写だが、あくまで私見でしかないが、「E-P1」の17mm/F2.8パンケーキレンズよりも解像感が高く、ボケ味もやわらかであるように感じられた。F1.7という大口径レンズだけあって、絞り開放では周辺光量落ちが出る場合もあるが、前玉の大きなパンケーキレンズにしては、フレアはよく抑えられていると思う。
 特筆すべきは、とにかくAFの合焦速度が速いこと。これは20mm/F1.7だけに限らず、14-45mm/F3.5-5.6でも、また、他のパナソニックマイクロフォーサーズ用レンズでも同様だ。GF1のAFはおそろしく速くピントが合う。おそらく、コントラストAFとしてはトップレベルの合焦速度を誇っているのではないだろうか。ことAF速度に関しては、「E-P1」はGF1にとても及ばないと感じた。
 不満に思ったのは、20mm/F1.7では、動く被写体を追ってピントを合わせ続ける「AFC」が使えないこと。単焦点レンズでも動体連写を行うことはあるし、動画撮影使いたくなる場面も多いと思われるので、ぜひ「AFC」も使えるようにしてほしかった。
 また、Pモードで撮影すると、暗いシーンではすぐに絞り開放になってしまう点も気になった。メニューの「ISO感度上限設定」で、上限を最高のISO1600に設定していても、積極的にISO感度を上げようとはせずに、絞り値を開放側にシフトするようなプログラムになっている。Pモードでの撮影では、「もっと絞り込んで、その分、ISO感度を上げてほしい」と思うことがたびたびあった。
 20mmという本来は超広角レンズなので、絞りF1.7の開放でも十分な被写界深度が得られる、という判断なのかもしれないが、うがった見方をすれば、「高感度の描写にはやや自信がないのかな」とも思えてしまう。実際、GF1と「E-P1」の高感度画質を比べてみると、正直、「E-P1」のほうが高感度ノイズがよく抑えられていて、ノイズの出方も素直で好感が持てるように感じられた。同じ撮像素子を使っている両機だが、画像処理システムの違いがこうしたところに現れているようだ。
●動画記録に2つのフォーマットを搭載。後継機には新センサーを期待
 その撮像素子だが、GF1が搭載しているのは有効1210万画素のLiveMOSセンサーで、これはG1と同じもの。ただし、G1では動画撮影に対応していなかったが、GF1は、1280×720ピクセルで秒30フレームのHD動画の録画が可能だ。しかも、動画記録フォーマットとしては、AVCHD LiteとMotion JPEGの2つに対応している。ハイビジョンテレビなどでの鑑賞を目的とするならAVCHD Lite、パソコンでの鑑賞や動画編集を前提とするならMotion JPEG、と使い分けると良いだろう。
 動画撮影の開始と終了の操作は、シャッターボタンの横に設けられた独立した「動画ボタン」で行う。モードダイヤルを切り替えたり、メニューから呼び出したり、という手間がかからず、すばやく動画撮影に移れる点はとても便利だ。
 欲をいえば、G1ではなく、GH1に搭載されている撮像素子をGF1にも搭載して欲しかった。GH1の撮像素子(と「ヴィーナスエンジンIV」の組み合わせ)なら、フルHD動画の録画が可能。また、静止画の撮影でも、GH1の撮像素子は、マルチアスペクトで撮影したときに対角線画角が常に一定で、画素数の変化も最小限に抑えられるというメリットを持っている。コストやボディサイズの問題から、GF1への搭載は見送られたのではないかと思われるが、後継機では、ぜひとも搭載を実現してほしい項目の筆頭に挙げておきたい。
●外付けライブビューファインダーは揃えておきたいアイテム
 GF1は、エスプリブラック、シェルホワイトに加えて、アーバンレッドの3色のカラーバリエーションを揃えている。一番人気はエスプリブラックで、GF1はボディ外装にアルミを採用していることもあって、黒はかなり精悍なイメージだ。パンケーキレンズと組み合わせると、いかにもツウ好みの雰囲気をかもし出す。
 一方、白はまたガラリと印象が変わって、まるで陶器のような雰囲気を持つ。赤は、G1、GH1のコンフォートレッドとは違って、ドレッシーさをまとっている。どの色も魅力的で、どれか1つを選ぶとなると迷ってしまうが、アクセサリーで遊んでみるなど自分なりのコーディネートが楽しめそうなのは、案外シェルホワイトかもしれない。
 ボディにはEVFの搭載を省略したGF1だが、別売りのライブビューファインダー「DMW-LVF1」が用意されている。「コンパクトデジタルカメラのように背面の液晶モニタを見ながら撮影するのではなく、デジタル一眼レフカメラと同じように、あくまでもファインダーを覗きながらシャッターを切りたい」という方は、この外付けLVF1も一緒に手に入れておくと良いだろう。
 このファインダーも見え具合はなかなか良く、G1、GH1のEVFと比べてもあまり見劣りすることはないように思った。LVF1は視野率100%。かなり広範囲に調整できる視度補正機能もついている。もちろん、レンズのズーム操作にも連動するし、各種撮影情報の表示や再生画像の表示も行えるので、わざわざ外付け光学ファインダーを装着して使うくらいなら、素直にLVF1を購入して撮影に臨むほうをおすすめしたい。
●撮る楽しさを再認識させてくれるカメラ
 マイクロフォーサーズ規格では、マウントアダプタを介して他メーカーのさまざまなレンズを装着して撮影が楽しめる点も見逃せない。当然ながら、AFが使えなかったり、AEにも制約があったりするが、絞りとシャッター速度を自分で決めて、マニュアルでピントを合わせてシャッターを切るのは、写真撮影の基本中の基本。デジタル技術の発達が、まるで原点回帰するかのようにそうした「写真を撮る楽しさ」の基本に立ち返らせてくれるところは、何ともうれしいことでもある。
 GF1には、「iA(インテリジェントオート)モード」があって、それにセットしておけば、何も考えずにシャッターボタンを押すだけで、誰でも十分に美しい写真を撮ることができる。しかし、できれば、AモードやSモードなどを積極的に使って、絞りやシャッター速度を自分の意思でコントロールしながら、撮影に臨んでみてほしい。すべてをカメラまかせにするのとはまた違った、「写真を撮る楽しさ」がきっと実感できるはずだ。
 マイクロフォーサーズ機に対するパナソニックの本気度がうかがえる、「LUMIX GF1」。オリンパスE-P1」とともに、カメラ市場における新しい分野を切り拓き、末永く発展させていってくれることをおおいに期待しているし、その期待に間違いなく応えてくれるカメラだと思う。(フリーカメラマン・榎木秋彦)
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凝ったつくりなのに女性に人気があるというのが不思議ですね。

簡単でかわいいものが人気でしたが、カメラにこだわる女性が増えているのでしょうか?