緊急に備え 冷蔵庫に医療情報

引用

 安心・安全は冷蔵庫に−。持病や服用薬などの医療情報を容器に入れて冷蔵庫に保管する「救急医療情報キット」の導入が、東京都港区や北海道夕張市など全国に広がっている。自宅で倒れるなど万一の際、迅速な救命活動に役立ててもらうのが狙い。高齢化が進む地域住民の命を守る取り組みとして注目を集めている。
 ◆迅速な救命に
 約20万人が暮らす港区は昨年5月から「救急医療情報キット」を、希望する区民(高齢者と障害者)に無料で配布している。キットは持病や服用薬、かかりつけ医、緊急連絡先を記入する用紙とプラスチック容器がセット。必要事項を書き込んだ用紙のほか、本人確認ができる写真や健康保険証の写しを容器に入れ、冷蔵庫に保管する。
 同高輪地区総合支所の神田市郎区民課長は「都会では隣近所とのつきあいが少なく、万一のときに不安を抱える高齢者も少なくない。病状を説明できないような一刻を争う事態に、救急隊が患者情報をいち早く把握することで適切な救命活動につなげてもらえれば」と、導入の狙いを話す。
 東京消防庁との連携で、玄関の内側にキットがあることを示すシールが張ってある場合、救急隊が冷蔵庫を明けて内容を確認する。反響は大きく、この1年で配布対象の約1割にあたる約3500人に広がった。
 医療情報を冷蔵庫に保管するユニークなシステムは、米国・ポートランド市が実施する高齢者の救急対応を参考に、港区が考案した。「冷蔵庫ならどこの家庭にもあるし、すぐ目につく。外部に事前に個人情報を知らせる必要もないので、プライバシーを守れる極めて都会型のシステム」と神田課長。
 ◆災害時にも有効
 こうした動きは全国に広がり、夕張市でも今年から、「救急情報医療キット−命のバトン」を500人の市民に試験的に導入。65歳以上の高齢人口が全体の43%、独居高齢世帯も3割近い夕張市では、日頃から健康に不安を抱える住民が多いことから、財政破綻(はたん)を機に立ち上がった有志らでつくる「ゆうばり再生市民会議」が発案。紙芝居を作成して必要性を訴えた。
 キットを手元に置く市民に実施したアンケートでも「安心して暮らせる」「1人暮らしなので心強い」など、96%が「必要だ」と回答している。
 東京都日の出町でも民生児童委員が中心になって配布を開始し、約900世帯の冷蔵庫に保管。まだキットがある家庭への出動はないという。
 市と連携する秋川消防署の坂田招彦生活安全担当係長は「急病時などで自宅に駆けつけた際に持病やかかりつけ医の情報があれば、迅速な救命処置や搬送先選びに役立つ。災害時にも有用な画期的な取り組み」と歓迎する。
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 ■高齢化で救急需要拡大
 平成20年版の消防白書によると、通報から救急車の現場到着までの時間は全国平均で7・0分、到着から患者を搬送し医療機関に収容するまでの時間は26・4分で、いずれもワースト記録を更新した。
 高齢化などに伴って救急需要も拡大。19年の救急出動件数は約529万件に上り、過去10年間で約52%増加した。これに対し、全国の救急隊の増加は8%にとどまっている。救急搬送に占める高齢者の割合は、18年に46・1%に達した。

 

何だか面白い発想ですね。

これは田舎でも利用できるのではないでしょうか?