格安マツタケ開発競争に拍車

引用

マツタケといえば日本のキノコの最高級品だが、長く人工栽培は難しいとされてきた。
 ところが近年では、バイオ企業の研究開発が進み、あと一歩の水準にまで近づいている。いち早く技術を確立すれば天然マツタケより価格を抑えて販売できるため、“夢のマツタケ”に向けた開発競争に拍車がかかっている。
 「キノコになるか!」
 マツタケ菌の培養実験を続けて3年が過ぎた平成20年6月、大津市内のタカラバイオの研究室で、酒井武・主幹研究員は心を躍らせた。ドーム状になった菌糸の塊がフラスコ内に見えた。マツタケがキノコ(子実体)に成長する前段階の「子実体原基」といわれるもので、研究チームはその発生技術を確立した。人工マツタケの開発まであと一歩に迫った瞬間だった。
 これまで多くの企業がマツタケの人工栽培を試みたが、子実体原基の再現可能な方法を確立できなかった。16年12月にマツタケのゲノム(遺伝情報)解読に世界で初めて成功したタカラバイオは、キノコ発生にかかわる遺伝子の解析も進め、酒井氏も栄養や温度、菌株(品種)などの条件を変えて培養実験を日々繰り返した。
 だが、フラスコの中はいつもバラバラの白い菌糸だけで、キノコになる気配はなかった。マツタケ菌は他の食用キノコに比べて成長が遅い。実験には長い時間がかかり、培養条件は膨大だった。ここまでくるのに困難を極めたが、ようやくゴールがみえてきた。
 次に超えるべきハードルは、子実体原基からのキノコの発生だ。登山でいえば、登頂アタックだ。
 酒井氏は「人工栽培マツタケは実現できる。そう世界で一番信じているのは自分」と自信をみせる。
 林野庁によると、国産マツタケの卸価格は変動が激しいが、1キログラム当たり約5万円。なかには15万〜20万円の高値をつけるものもある。需要に対して供給量が圧倒的に少ないため、どうしても値段が高くなる。
 マツタケは国内消費の95%以上を外国産が占め、大半は中国からの輸入が占める。国産は味、香り、形のいずれをとっても人気が高いが、生産量はこの半世紀で大きく減少した。
 森林総合研究所の村田仁・主任研究員によれば、国産マツタケは昭和16年ごろの出荷量が年間約1万2千トンもあったが、乱獲や地球温暖化、松枯れなどで現在は100トン前後にまで激減したという。
 人工栽培技術がいまだ確立されていないマツタケは、自生したものを採取・出荷しているため、天候などの環境変動の影響を直接受けてしまう。こうした難しい条件こそ、各社を開発競争に駆り立てる理由の一つでもある。
 キノコ大手の雪国まいたけは4月、玉川大学の関連ベンチャーである「ハイファジェネシス」や東京家政大学と連携し、マツタケの成長に必要な約8千個の遺伝子を解読した。また、今秋には発生段階でどの遺伝子が発現しているかといったデータベースも完成する見通しだ。
 遺伝子工学の発達で、これまで不明な点が多かったマツタケの研究開発は確実に進歩している。季節を問わず、手ごろな価格で市場においしいマツタケが流通する。そんな夢の実現に向けた道が開かれる日は近い。

 

こういった研究者の努力で成り立っているんですね。

でも、マツタケなんてそんな無理して食べるほどおいしいとは思えないのですが…(汗)